伊藤博文さん、田端勉さんと一緒に、被災地を巡るツアーに参加した2015年8月。その際に訪れた「希望の牧場・ふくしま」と、牧場主・吉沢正巳さんとの出会いが、同牧場の応援プロジェクト立ち上げのきっかけでした。
2011年3月の福島第一原発事故を受けて、政府は、原発から20km圏内で被曝した家畜の殺処分を言い渡しました。しかしそれを拒否し、300頭以上の牛の命を守り続けているのが、原発から14km地点にある「希望の牧場・ふくしま」です。
「牛たちを見殺しにしたら、二度と牛飼いには戻れない」
「原発事故の生きた証人でもある牛たちを、失うわけにはいかない」
その強い想いを抱いた吉沢さんをはじめとするメンバーによって、一切の公的な支援がないまま、汚染された牧草などを自分たちで集めることで、いまも多くの牛たちが命をつないでいます。
吉沢さんの決断により生き延びた牛たちを目の前にして、わたしたちにも何かできることはないかと考えました。そこで、建設計画中だった6号機の市民共同発電所を、希望の牧場の応援のための発電所にしようと決めました。
発電所の建設には原発反対運動で知り合った仲間に出資を呼びかけ、13名から48口のご賛同をいただきました。多くの人の想いを乗せた静岡市民共同発電所6号機は2015年9月に完成。発電所から生まれた電気の売電収益は、必要経費を除いたすべてを、希望の牧場への寄付に充てています(年間70万~80万円)。
牛一頭あたりの毎月のエサ代が1万円とも言われるなかで、決して大きくはない支援ですが、わたしたちにとっては、他団体支援を目的に運用する初めての発電所であり、モデル事例となりました。
また、この吉沢さんら牛の世話を続ける農家の姿を描いたドキュメンタリー映画『被ばく牛と生きる』が現在、全国で上映中です。わたしたちが支援する活動の先に、どんな問題があるのか、ぜひ映画を通して、みなさんに感じていただきたいと思います。
(山田 夕)